1990年発売の数あるサザンオールスターズの楽曲においても、長年ファンに愛され続ける隠れた名曲。
『忘れられた BIG WAVE』は夏の海辺を思わせる爽やかなサウンド。
どこか切なさを感じさせるメロディー。
楽器の音は一切使われておらず、全て桑田さんの声の多重録音(コーラス・ボイスパーカッション)。
リードボーカルから幾重にも重なるバックコーラス、そしてベース音(低音ボイス)やボイスパーカッションに至るまで、全て桑田佳祐さんお一人の声だけです。
凄いですよね。
そして、指を「パチン」と鳴らすフィンガースナップ(指鳴らし)で、リズムを刻んでいます。
そう、この楽曲は桑田佳祐さんによる完全な、ソロ・ア・カペラ作品なんです。
美しいコーラスラインが響き渡る、桑田佳祐さん屈指の「ポップスの最高峰」と評される名曲でもあります。
『忘れられたBIGWAVE』歌詞の意味を考察
歌詞の冒頭から、「過ぎ去った輝かしい日々(青春)」への愛おしさや切なさを描かれている。
そして「BigWave」ってサーフィンで乗る大きな波を想像しがちだけど、それだけではない。
Oh もう一度あの頃に帰りたい
瞳を閉じて
待ちわびてるBigWave
その日を信じて お前だけを
作詞作曲 桑田佳祐
『BigWave』=「人生の中で最も情熱的で、奇跡のようだった瞬間、青春の絶頂期」の比喩として描かれているよう。
10年経って大人になり、どこか冷めてしまった日常の中で、もう一度あの熱く大きな波を待ちわびている、大人のノスタルジーが表現されている。
桑田夫妻による山下達郎へのオマージュ
この楽曲を語る上で絶対に外せないのが、日本のポップス界の巨匠・山下達郎さんの存在です。
桑田さん・山下さん両夫妻との親交は深い。
1988年に発売された山下達郎さんのアルバム「僕の中の少年」に収録されている楽曲「蒼氓(そうぼう)」において、桑田佳祐と原由子、竹内まりやと共に、コーラス参加するほど。
お互いに、リスペクトし合う関係性が知られています。
山下達郎さんは1984年に、サーフィン・ドキュメンタリー映画「BIG WAVE」のサウンドトラックを手掛けています。
桑田佳祐さんは映画「稲村ジェーン」の製作をする際には、深い影響を受けたといいます。
そのリスペクト・オマージュとして制作したのが、『忘れられた BIG WAVE』です。
桑田さんの美しいコーラスワークは山下達郎さんの楽曲を感じさせるほど。
そんな桑田さんの一つひとつの言葉を丁寧に紡ぐような詩的センスも、『忘れられた BIG WAVE』で存分に発揮されています。
だからこそ、シティポップを好むリスナーからも高い支持を得ているのかもしれません。
映画『稲村ジェーン』の挿入歌
『忘れられた BIG WAVE』は、1980年代のサーフカルチャーを象徴する楽曲としても知られています。
タイトルから連想されるように、広大な海や波をイメージさせる曲です。
特にイントロから広がる爽快感やサビの開放感は、映像との相性も抜群といえるでしょう。
そんな違和感のないドラマチックな構成が特徴であり、聴く人それぞれの思い出や風景を呼び起こすのです。
まるで一本の青春映画を観ているかのような情景が思い浮かぶのではないでしょうか。
映画の挿入歌でありながら、一番初めに出来上がっていたモチーフ的な楽曲。
と、桑田さん自身が語っていたそうです。
「稲村ジェーン」の台本を作っているときに浮かんだ曲で、ビーチボーイズ的なバラードがやりたかったといいます。
サーフィンを扱った映画だったため、ビーチボーイズの音楽が登場するのも自然な発想といえるでしょう。
こうなれば最初に浮かんだ曲というのも納得がいきますよね。
サザンの楽曲といえば、映像的な表現力が数多く見られる中、この楽曲はより映画的な魅力にあふれている感じがします。
美しく重なり合うソロ・ア・カペラ
この楽曲の大きな聴きどころのひとつが、アカペラコーラスワークです。
サザンオールスターズは、デビュー当初からコーラスアレンジに定評があります。
『忘れられた BIG WAVE』では、その魅力が特に際立っているのです。
前述したように、それが桑田佳祐さんお一人による、美しい「ソロ・アカペラ・コーラス・ボイス・パーカッション」です。
楽器の一部として機能するほど緻密に構築されている。
それによって、楽曲全体に豊かな奥行きを与えています。
その波のうねりのように広がるハーモニーは、まるで海風が耳元を通り過ぎるような心地よさがあります。
そんな桑田さんの透明感のある歌声こそが、楽曲の幻想的な世界観を作り上げているのです。
ユニクロCMで再評価
発売から30年以上が経過した現代、ユニクロのCMでこの曲が流れたとき、多くの人が「今の時代の曲」として違和感なく受け入れたのではないでしょうか。
2025年にユニクロ・エアリズムのCM「LifeとWear/親友」篇で起用されました。
その背景として、若者の昭和・平成カルチャーへの関心が高まりつつあり、近年『忘れられた BIG WAVE』も若い世代からも再評価されています。
そしてサザンの世代を超えて愛される理由は、流行に左右されない普遍的なメロディーにあるでしょう。
さらに、サブスクリプションサービスの普及もあり、サザンのアルバム収録曲にも再び注目が集まっています。
まとめ
1990年のオリジナルアルバム「稲村ジェーン」に初収録され、同年のベストアルバム「Southern All Stars」にも収録されました。
さらに、1998年リリースの「海のYeah!!」にも収録されています。
このことからも、人気の高い楽曲であることがうかがえます。
長年のファンはもちろん、これからサザンを聴き始める人にもぜひおすすめしたい一曲です。
美しいコーラスワーク、映画のような世界観。
そしてアルバムの中で輝く存在感と桑田佳祐さんの魅力が凝縮されている。
時代が変わっても色褪せることのないこの楽曲は、夏の訪れを感じたときに、改めて聴いてみることをお勧めします。

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