『ガス人間』と『いとしのエリー』/物語をつなぐ愛と記憶

このドラマを観るまでは、『いとしのエリー』がこのホラー映画のような作品に使われることに、私は違和感と不安を抱いていた。

サザンオールスターズの名曲『いとしのエリー』とガス人間という得体のしれない恐ろしい謎の物体が、どうしても結びつかなかったからだ。

これほど美しく優しいラブソングが、殺人や恐怖を描く物語の中で流れることで、この『いとしのエリー』のイメージまで変わってしまうのではないかと思った。

そんな心配をしながらドラマを観始めた。

しかし、最後まで観終えた今、私の感情は全く変わっていた。

この作品は『いとしのエリー』を汚すどころか、この曲の持つ愛の深さを全く新しい形で私に教えてくれたのである。

キーソング『いとしのエリー』が人と人を繋いでいく

『いとしのエリー』は、このドラマの重要なキーソングとなっていた。

物語を観ていくと、この曲が人と人を結ぶ”愛の記憶の糸”

のように思えてくる。

始めにこの曲と深く関わるのは、文庫ラーメンの店主である。

店主はラジオ番組「ラジカルパラダイス」にじぶんの好きな歌である『いとしのエリー』をリクエストしていた。

レンが初めて店を訪れたその日、偶然そのリクエスト曲が採用され、店内に『いとしのエリー』が流れ始める。

喜んだ店主は、レンにラーメンをご馳走した。

それは、身寄りのないレンにとって、とても嬉しい出来事で、一杯のラーメンと一曲の音楽が結びついた、忘れられない思い出となった。

その後、ホワイトセンターから逃げ出してきた京子が、お腹を空かせながら町を歩いていたとき見つけたのが、その文庫ラーメンだった。

店の窓に張り付くように店内を見ている京子をレンは見つけた。

声をかけるがなかなか心を閉ざしたままだ。

レンはあの日、自分がしてもらったように京子にラーメンをご馳走する。

そしてなんと、店内には『いとしのエリー』が流れ出す。

レンは店主に喜んでもらおうと、ラジオ番組「ラジカルパラダイス」にリクエストしていたのだ。

店主から受け取った優しさを、今度はレンが京子へ渡していく。

この瞬間、『いとしのエリー』は、店主・レン・京子の三人を繋いでいた。

この物語のキーワード

ラジオ番組「ラジカルパラダイス」では、毎回こんな言葉が流れる。

リスナーさん、願いを一つ言ってください

この何気ない一言が、この物語全体の「鍵」になっていた。

レンはラーメンを食べる京子に、レンゲをマイク代わりにしながら笑顔で言う。

リスナーさん、願いを一つ言ってください

その瞬間、京子は顔をくしゃくしゃにして大泣きする。

そして時間をおいて、言った。

私のお父さんになって

家族の温もりを知らず、過酷な労働を強いられ、慕っていたお姉ちゃんの無残な死を目の当たりにし、やっとのこと生きてきた京子が、初めて心から誰かに甘えられた瞬間だったのではないか。

その時のレンの優しい眼差しがとても良かった。

とても胸を締め付けられ「京子よかったね!」と心の中で私は呟いていた。

しかし、UTAはあんな巨体だが、物腰が柔らかくとても優しい表情をするよね。

モッくん(お父さん)にそっくりだ。

実は私、昔”シブがき隊”のファンだったんです、、、。

それも、モッくん推しで、、、。

 

突然訪れる別れ

二人で仲良く暮らしていたが、その幸せは長くは続かなかった。

ホワイトセンターから隕石処理の仕事を依頼されたレンは現場へ向かい、あまりにも残酷な最期を迎える。

その光景を京子は目の前で見てしまう。

レンの身体はガスとなり、散らばっていった。

賢治と『いとしのエリー』

時は流れ、京子は報道記者となる。

新人記者だった頃、捜査一課警部補の賢治に密着取材をしていた。

そのとき、車の中で流れてきたのは、『いとしのエリー』。

京子が、賢治にこの曲のことを尋ねると、「父が好きだった曲なんだ。」と答える。

今度は賢治が京子に尋ねると、「そんなところです。」

とだけ答える。

この短いやり取りには、多くの感情が詰まっている。

蒼井優の演技が素晴らしい。

京子にとって『いとしのエリー』は、レンとの思い出そのものだった。

この瞬間から、『いとしのエリー』は賢治と京子にも繋がった。

賢治と京子はお互い愛していた

物語が進むにつれ、賢治は京子を深く愛していることが伝わってくる。

そして京子もまた、賢治を愛していた。

しかし京子は、その愛を受け入れることが出来なかった。

レンを失って、自分だけが新しい幸せを手にしていいのか。

これまで背負ってきた人生も重なり、京子は賢治の愛に応えることが出来なかった。

愛しているのに一緒にはなれない。

その切なさが『いとしのエリー』とも重なり、このドラマのもう一つの純愛だったように思う。

レコードから流れる『いとしのエリー』

取材でかつてレンと暮らした廃墟を訪れる。

そこには、レンと遊んだカラクリドミノが残されていた。

ドミノが倒れるとレコードの針が落ち、『いとしのエリー』が流れ始めるというものだ。

そして地下には、ガスが集まり石像のようなレンが眠っていた。

そう、27年前にガスとなり散らばった体は長い年月をかけて少しずつ集まっていたのだ。

そして『いとしのエリー』が流れ出すと、ガスの塊となったレンは、涙を一滴流す。

すると、涙が体にポツンと落ち、少しずつ人間の姿に戻っていく。

そして、

リスナーさん、願いを一つ言ってください

生前の優しい記憶は、死んでも消えていなかった。

『いとしのエリー』を聴いた瞬間、ガスの塊だったレンの中に、人間だった頃の記憶が蘇ったように私は感じた。

この演出は本当に美しく、鳥肌が立った。

最後に『いとしのエリー』のイメージが変わった

ドラマの途中までは正直戸惑っていた。

人を殺す前に、『いとしのエリー』が流れることによる違和感は、どうしても拭えなかった。

しかし、最後のシーンで全ての印象が変わる。

ガスとなった京子が、レコードで『いとしのエリー』を聴いている賢治の部屋へ、流れるように現れる。

目を閉じて聴いている賢治の後ろで、人魚のようにしなやかな姿を描きながら、静かに天を仰ぐようなガス像。

それは、幻想的で、美しく、切なかった。

My Love So sweet

    作詞作曲 桑田佳祐

お互いが「とても素敵な、私の愛しい人よ」

と、言っているようだった。

まとめ/何度も聴き返したくなる一曲となった

初めて『ガス人間』を観たときは、怖くて何度も顔を覆いながら観ていた。

しかし観終わった今、『いとしのエリー』を何度も聴き返していた。

すると、この曲の素晴らしさと共に、店主、レン、京子、賢治、それぞれが抱えた愛の形が見えてきた。

そう、じわじわとこの物語の凄さを実感しているのだ。

そして私の中で、『いとしのエリー』は以前にも増して特別な一曲になった。

音楽は、人の記憶を繋ぎ、人を愛し続ける力を持っている。

『ガス人間』が、そのことを教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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