アニメ「あかね噺」の主題歌が、桑田佳祐の新曲「人誑し/ひとたらし」だと発表された。
落語をテーマにした作品と桑田佳祐。
私はこの顔合わせに一瞬驚いたが、すぐに「なるほど」と腑に落ちた。
そして「人誑し/ひとたらし」を聴いた瞬間、イントロでまた驚き鳥肌が立った。
そして妙に懐かしさを感じた。
なぜ桑田佳祐が「あかね噺」の主題歌を歌うのか。
深堀したいと思う。
「人誑し/ひとたらし」という言葉の語源ー落語という芸
「あかね噺」は落語の世界を描く物語だ。
落語とは、江戸時代から続く伝統的な話芸。
座布団に座った落語家が、扇子と手ぬぐいだけを使い、身振りと会話だけで複数の登場人物を一人で演じ分ける。
師匠から弟子へと高座名が受け継がれ、同じ噺でも演じる人によって全く違う色になる。
庶民の生活や人間模様を描いた滑稽話や人情話まで幅広く、物語の最後に「オチ(サゲ)」がつくのが特徴だ。
「ひとたらし」の本来の意味は、「人を騙す」という意味から転じて、現代では「誰にも好かれる」「人を惹きつけて離さない魅力を持った人」を指す褒め言葉として使われている。
「ひとたらし」は漢字で書くと「人誑し」。
人を言葉巧みに騙したり誘い込んだりすることを誑かす(たぶらかす)というがまさにそのままだ。
落語家もまた、観客を笑わせ、泣かせ、引き込む存在。
まさに”人たらし”でなければ務まらない職業だ。
桑田佳祐と落語の縁
桑田佳祐は落語好きと知られている。
青学時代にはすでに落語に触れている。
また、過去にはNHKのTV番組で落語を披露している。
高座名は”波乗亭米佑(なみのりていべいすけ)”。
演目は創作落語で「あなたへの手紙」と題した曲にまつわる小噺。
さすが桑田さん!
もし歌手になっていなかったら、人気落語家になっていたのではないだろうか。
つまり、「あかね噺」の主題歌を担当することは、偶然ではなく必然のように思える。
主題歌「人誑し/ひとたらし」がアニメ「あかね噺」に合う理由
「あかね噺」は落語家の父を尊敬する少女が、魔法のような落語に魅せられて噺家として奮闘する本格落語物語。
落語には昔から語り継がれている噺があるが、演じる人によって表情は変わる。
今の時代の感覚で語られるからこそ、落語は今も生き続けている芸だ。
「人誑し/ひとたらし」もまた、新曲でありながらどこか懐かしい。
古さと新しさが同居する。
この構造が作品と主題歌を自然につないでいるよう。
なぜ桑田佳祐なのか?
その答えは、
落語的な”間”や”語り”を自然に歌に宿すことのできるアーティストだから、という点にあるのではないか。
実は原作者の末永裕樹(2022年少年ジャンプ連載)は子供の頃サザンの歌に触れている。
原作者の親世代がまさに、サザンオールスターズ全盛期を知る世代だ。
母親が良くサザンの曲を聴いていたようで、原作者も子供の頃から自然とその音楽に触れていた。
落語という日本の伝統芸能をテーマにした作品に、昭和の香りを残す桑田佳祐の楽曲が重なるのは、原作者にもその親にも堪らなく嬉しくまた、これは偶然とは思えないのは私だけだろうか?
「人誑し/ひとたらし」という主題歌には、そんな世代を超えた文化の繋がりも感じられる。
「人たらし」は何故懐かしく聴こえるのか
調べてみると、「マイナーキーのギターリフ」と表現されていた。
これはどういうことか?
マイナーキーとは、少し切なさや哀愁を帯びた響きのこと。
ギターリフとは、曲を印象づける短めなフレーズのこと。
そして、かつてのエレキサウンド(グループサウンズ)を思わせるギターの音色が、私には昭和の空気を思わせた。
まさに、昭和時代のサザンの作品には、洋楽のトレンドを取り入れながらも、親しみやすさと、哀愁漂う雰囲気があり、独創的な歌詞とメロディで独自の世界観を築いていた。
「人誑し/ひとたらし」は新曲だけど、昔のサザンらしさがちゃんと息づいている。
昭和時代のサザンを知っているから懐かしく感じたのかもしれないが、若い世代にはどう聴こえるのだろうか。
新鮮に聴こえるのか、それとも古風に感じるのか、、、。
これまで述べたように、懐かしさの正体は、
「マイナーキーのギターリフ × サザン的な哀愁 × 独創的な歌詞とメロディ」
という、三層構造にあるのではないだろうか。
まとめ
「あかね噺」は継承の物語。
「人たらし」もまた音楽の継承を感じさせる楽曲。
落語も音楽も、時代を超えて受け継がれる芸。
桑田佳祐というアーティストが主題歌を担うことは、過去と現在を繋ぐ象徴のようにも思える。
懐かしさと新しさ。
軽快さと人間臭さ。
その両方の魅力をもつ「人誑し/ひとたらし」は、まさに”人を惹きつける歌”なのではないだろうか。
つまり桑田佳祐その人物こそが、歌謡界の「ひとたらし(人誑し)」と言えるのではないか。

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