サザンの名曲『TSUNAMI』の歌詞の意味|大ヒットの記憶が薄い私が今あらためて聴く

2000年1月26日、サザンオールスターズの『TSUNAMI』が発売された。

オリコンの推定累積売上は293.6万枚。平成のシングル売上ランキングでは2位を記録し、第42回日本レコード大賞も受賞した。

サザンのシングルで最も売れた、まさに国民的大ヒットの名バラード曲である。

もちろん私も『TSUNAMI』は知っていた。

若い頃からずっとサザンを聴いてきたし、この曲がかなりヒットしたことも知っている。

それなのに不思議なことに、『TSUNAMI』が日本中で大ヒットしていた頃の記憶が、私にはあまりない。

なぜだろう。

考えてみると、2000年頃の私は人生で一番辛く、大変な時期を過ごしていた。

シングルマザーとして歩き始め、小さな子供を抱えながら、仕事と育児に追われる毎日。

車の中で流していたのも、サザンではなく、子供向けの音楽やディズニーの曲が多かった。

『TSUNAMI』が売れていることは知っていた。

でも、音楽をゆっくり聴き、大ヒットを実感するほどの心の余裕がなかったのかもしれない。

人生には、好きな音楽さえ心に入ってこない時期がある。

今あらためて『TSUNAMI』を聴くと、当時とは違う思いが湧いてくる。

今回は『TSUNAMI』の歌詞の意味と、桑田佳祐さんがこの曲を生み出した背景をたどってみたい。

『TSUNAMI』はなぜイントロがない?

『TSUNAMI』はイントロがなく、いきなり桑田さんの歌声から始まる。

何の前触れもなく聞こえてくる、少しかすれた静かな歌声。

この始まり方がとても印象に残る。

小貫信昭さんの著書『いわゆる「サザン」について』をもとにした文藝春秋「本の話」の記事によると、桑田さんは当時、イントロのない曲を意識していたという。

1990年代は音楽制作の技術が進み、できることが増えた時代だった。

その一方で、桑田さんは音を重ね、凝った構成にすることで、曲に余分なものが増えていたと振り返っている。

そして『TSUNAMI』では、さまざまなものが整理された。

そうして生まれたのが、イントロさえ置かず、歌から始まる曲だった。

この背景を知ってから聴くと、『TSUNAMI』の最初の一声が以前より強く耳に入ってくる。

静かな歌い出しから、サビに向かって感情が少しずつ大きくなっていく。

余計なものを削ったからこそ、桑田さんの声とメロディーが前に出たのだと思う。

桑田さん自身も新鮮に感じた『TSUNAMI』のサビ。

『TSUNAMI』といえば、やはり一度聴いたら耳に残るサビだ。

長く曲を作り続けてきた桑田さんは、『TSUNAMI』のサビのメロディーが浮かんだ時、自分が過去に同じような曲を作っていないか気になったという。

そこで周囲のスタッフ数人に確認した。

誰も過去の曲にはないと答え、そのメロディーが新曲に採用されたそうだ。

私はこの話がとても面白いと思った。

あれだけ多くの曲を作ってきた桑田さんだからこそ、自分の過去の作品と重なっていないかが気になるのだろう。

そして桑田さん自身が新鮮に感じたメロディーは、日本中の人の耳にも強く残った。

静かな歌い出しから、あのサビへ。

『TSUNAMI』が何度聴いても印象に残る理由の一つは、このメロディーの強さにあるのかもしれない。

なぜ曲名は『TSUNAMI』?サーフィンとの意外な関係

私は以前、『TSUNAMI』というタイトルは、恋する感情を大きな波に例えたものだと思っていた。

しかし、この曲名には桑田さんが愛するサーフィンが関係している。

桑田さんにとってサーフィンは、周囲の雑音から離れ、一人になれる大切な時間だったという。

そんな中で出会ったのが、サーファーを描いたドキュメンタリー作品『TSUNAMI CALLING』だった。

『TSUNAMI』というタイトルは、この作品がきっかけになったとされている。

大きな波に向かうサーファーの姿。

そして、自分では止められないほど押し寄せる恋の感情。

曲の背景を知ると、『TSUNAMI』というタイトルが少し違って見えてくる。

ただ「大きな波」という意味だけではなく、桑田さんがサーフィンに感じていたロマンも、この曲につながっていたのだ。

『TSUNAMI』の歌詞の意味|忘れられない恋と男の未練

『TSUNAMI』の主人公は、過去の恋を忘れられずにいる。

自分の弱さを分かっている。

涙もろいことも分かっている。

それでも、心に残る人への思いを消すことができない。

私はこの歌を聴くと、男の未練という言葉が浮かぶ。

忘れたいのか。

忘れたくないのか。

自分でも分からない。

普段は普通に暮らしていても、ふとした瞬間に昔の記憶がよみがえる。

一度思い出すと、次々に感情が押し寄せてくる。

私は『TSUNAMI』の波を、そんな心の動きのように感じる。

過去の恋を歌っているようで、歌の中にいるのは「今」の自分でもある。

忘れられない人がいる。

あの頃には戻れない。

それでも今を生きている。

だから『TSUNAMI』は、ただの失恋ソングではないのかもしれない。

『TSUNAMI』と「未来日記」|発売前から流れていた名曲

『TSUNAMI』は、TBS系『ウンナンのホントコ!』内の人気企画「未来日記」で使われた曲でもある。

サザンオールスターズ公式サイトによると、発売前年の12月から「未来日記III」で流れ、翌1月の「未来日記IV」でも引き続きオンエアされた。

発売前から曲を耳にした人も多かったのだろう。

限定版の12cmパッケージは、発売日にはすでに売り切れるほどの反響だったという。

私は当時、「未来日記」をほとんど覚えていない。

『TSUNAMI』が大ヒットしていたことは知っている。

でも、その熱狂の中に自分がいたという記憶が薄い。

やはり2000年の私は、テレビの恋愛企画を楽しんだり、音楽をゆっくり聴いたりする余裕がなかったのだと思う。

同じ時代を生きていても、見えていた景色は人によって違う。

当時「未来日記」を見ていた人は、『TSUNAMI』を聴くと番組の映像や、その頃の自分まで思い出すのかもしれない。

私には、その記憶がほとんどない。

東日本大震災後、『TSUNAMI』が背負ったもの

2011年3月11日、東日本大震災が発生した。

甚大な津波被害によって、「TSUNAMI」という言葉は、それまでとはまったく違う重さを持つことになった。

震災後、テレビやラジオでこの曲を耳にする機会は減った。

桑田さん自身も2018年のインタビューで、被災した人たちへの思いから、「『TSUNAMI』をしばらく大切にしまっておこう」と考えたことを語っている。

曲に罪があるわけではない。

もともとは、忘れられない恋と押し寄せる感情を描いた歌だった。

しかし、大きな出来事によって、曲名の受け取られ方まで変わってしまった。

私は以前、『TSUNAMI』を「壮大なメッセージソング」と書いていた。

でも今回、曲が生まれた背景を調べ、歌詞をあらためて読み直してみると、少し違うと思った。

叶わなかった恋。

忘れられない人。

自分の弱さ。

『TSUNAMI』は、もっと個人的で、人間臭い歌なのだと思う。

今あらためて『TSUNAMI』を聴いて思うこと

2000年、『TSUNAMI』が大ヒットしていた頃、私は自分の人生を生きることで精一杯だった。

サザンはずっと好きだったし、この曲が大ヒットしたことも知っている。

それでも、当時の『TSUNAMI』の記憶は不思議なくらい薄い。

今回、曲が生まれた背景を知り、あらためて聴いてみた。

イントロのない静かな歌い出しから、あの大きなサビへ。

そして歌詞に描かれているのは、忘れられない人への思いを抱えた男の姿だった。

25年以上経った今だからこそ、以前とは違う聴こえ方をするのかもしれない。

大ヒットしていたあの頃ではなく、今になって『TSUNAMI』をじっくり聴いている。

私にとっては、それもまた音楽の面白さなのだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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