1996年のリリースから30年が経とうとしている今もなお、日本の音楽シーンに異彩を放ち続ける怪作、サザンオールスターズの『愛の言霊~Spiritual Message~(スピリチュアルメッセージ)』。
作詞作曲、共に桑田佳祐。
ドラマ「透明人間」の主題歌として大ヒットしたこの曲ですが、改めて聴き返すと、桑田佳祐という天才が仕掛けた「言葉と音の迷宮」に目眩がします。
ちなみに、「眩暈(げんうん、めまい)」は視界が回転するようにグルグル回って見える感覚ですが、「目眩(めまい)」は目がかすみ、頭がクラクラする感覚です。
微妙~に、「目眩」と「眩暈」は違うんですよね。
両方経験した私は、今「目眩」と闘いながらというか共存し合いながら、なんとか日々を送っています。
さてこの名曲は、
「何言ってるかわからないけど凄い」
「よく分からないけど何か深い」
と、一見すると難解な歌詞。
しかし読み解いていくとーーー
愛・言葉・運命・生と死 までを描いた、非常に深い物語が浮かび上がります。
今回は、「愛の言霊」の歌詞の意味や解釈、そして古語のように聴こえる理由まで、私の解釈で整理したいと思います。
『愛の言霊』は「意味」を超えた「響き」の魔術
まず”言霊”という言葉。
これは日本古来の思想で
「言葉には魂が宿る」
という考え方です。
そしてこの曲の最大の特徴は、
日本語、英語、古語風の言葉が渾然一体となったカオスな歌詞。
どういう事か言うと、
「いくつかの異なる言葉が混ざり合っているが、区別がつかない程に調和している」
と言う意味で
ようは、「日本語、英語、古語風がバラバラではなく、一つの独特の世界観として、完全に混ざり合っている」
という意味です。
まさに、「カオスだけど凄くて美しい」。
「愛の言霊」の全体像/愛は言葉から生まれ生死を越えようとする
この楽曲のストーリーを一言で、私なりにまとめてみるとーー
「愛が生まれ、言葉になり、運命に巻き込まれ、生死を越えようとする物語」
①まだ言葉にならない”感情の誕生”
・生まれく叙情詩(せりふ)とは
・夏の旋律(しらべ)とは
作詞作曲 桑田佳祐
ここで描かれているのは”言葉になる前の感情”
確かに心の中に”何か”が芽生えている状態。
そう、”これから生まれてくる感情の詩”
つまり、まだ形になっていない”愛の原型”を意味しているかのように私は感じます。
②想いが”言葉”となって現実に表れる瞬間
・愛の言霊
・禮!(らい!)
作詞作曲 桑田佳祐
ここで初めて、想いが言葉になります。
「禮」は「礼」の旧字体。
なんか、かけ声のようにも感じます。
この曲の核となる考え方が、先述したように、
”言葉には魂が宿る(言霊)”
という日本古来の思想。
つまりーー
”言葉はただの音ではなく、現実を動かす力を持つ”
愛は心の中にあるだけではなく、言葉にした瞬間から”現実”になると、私は思います。
③愛が”運命”や”呪縛”に変わる
・カゴメやカゴメ
・鍵屋
ここから空気が一変します。
楽しいはずの愛が、
逃げられない関係や運命へと変わっていく。
「カゴメやカゴメ」は、閉じ込められた世界・抜け出せない構造。
この「かごめかごめ」の歌は、鬼(真ん中に目を覆い座っている人)をみんなが手をつなぎ囲んだまま移動し、
歌の最後「後ろの正面だ~あれ」の時に自分(鬼)の後ろにいる人が誰かを当てる、という遊びで歌われています。
私も子供の頃は、よく「か~ごめかごめ」と歌いながら遊んでました。
でも、そのころは気づかなかったけど、よくよく歌詞を読むと怖いんですよね。
そして「鍵屋」は、夏祭りの高揚感と、(花火でも上がったのでしょうか?)運命を開く”鍵”。
という二面性を持っているのでは、と私は推測します。
つまり、愛しい人との死に別れ。
愛の甘さと怖さが同時に描かれているように思います。
④生と死の領域へ踏み込む
・閻魔堂
・釈迦堂
・黄泉の国
この曲が”凄い!”と言われる最大の理由がここにあると私は思います。
死後の世界まで踏み込んでいるよう。
「裁き(罪と罰)、救いと悟り、死の世界」
これらが示すのは、
「愛は死んだら終わるのか?」
「それでも続くのか?」
と問われているかのように私は感じる。
神話性・語感・リズムが生む”言霊的な響き”
この曲は古語のように聴こえる理由は3つあると思います。
1.「言霊」という日本古来の思想
2.倒置や曖昧な表現(和歌・祝詞的)
3.音やリズムを重視した言葉遊び
間奏には、インドネシア語も使われているそうです。
その結果ーー
言葉が”呪文”や”祈り”のように響く構造になっています。
実は「愛の言霊」は、サザンの”鎌倉ソング”
桑田佳祐さんの奥さんの原由子さんは、日々、鎌倉・湘南のハイキングコースを歩くことで、自然のパワーをもっているそうです。
そのハイキングコースは、20以上存在するそうです。
その中で”天国ハイキングコース”と呼ばれるコースがあり、
その天国ハイキングコースとセットでお勧めする楽曲が、この
「愛の言霊~Spiritual Message~」。
原坊は、
<過去に多くの人が、愚かな者が、幾千億年前の星の光見て
戦をしたり罪犯したなら、ぼくもまたそれを繰り返すのか>
というラップパートの歌詞を挙げながら、
昔は戦場だった鎌倉が背負う悲しい歴史について触れた。
RealSound2022年10月19日配信
「原由子鎌倉での思いでやおすすめスポットを熱弁」
この原坊のコメントから察するに、
鎌倉は
・武士の都(源頼朝が幕府を開いた)
・多くの寺院や神社が点在する(国宝には「鎌倉大仏」がある)
・死や祈りと隣り合わせの文化
つまりーー
生と死、祈り、歴史が重なっている場所
まさに、「愛の言霊」は悲しい歴史を背負った鎌倉文化と世界観が重なる。
そう、この曲の世界観を”鎌倉という現実の場所”に投影しているんではないでしょうか。
まとめ
ここまで読んで、「まだよくわからない~!」と思う人もいるかもですが、
ようは、『愛の言霊』は
・意味を説明することではなく、”感じるための歌”
だからこそ、「よく分からないのに惹かれる」「何度も聴きたくなる」「深いと感じる」
そんな不思議な魅力に溢れている。
・理解する音楽ではなく、”心で受け取る音楽”
・鎌倉の歴史が歌詞に込められた音楽
鎌倉を知る人が聴くと、より深く刺さるのでしょう。
しかし、”どの土地にも重なる人間の本質の歌”でもあるように私は思います。
一見重くシビアな詩にも取れますが、
桑田さんらしい遊び心溢れる歌詞と、ヒップホップな曲調、そして神秘的でスピリチュアルな世界観が溶け合い、気づけば心の奥に静かに残り続けているーー
そんな名曲です。

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